一度聴いたら忘れられない柔らかなヴォーカル、折り重なる美しいコーラスワーク。そして幻想的な白昼夢の中の淡い記憶と、日々の日記のように綴られた歌詞を、自身が演奏するピアノ、アコースティックギター、ハープなどの楽器たちが優しく包み込む。フォーク系シンガー・ソング・ライターGregory And The Hawkの持つ素朴さや、同世代でもあるPhoebe BridgersやJulien Bakerとも共鳴するような繊細さと親しみやすさを併せ持つ。
しかし本作の持つ魅力はそれだけではない。前作アルバム『Better At Night』では、慣れ親しんだエモ/ポストロック由来のフィンガーピッキング・スタイルを生かし、バンドサウンドをメインとしたポップな作品を作ったが、あれから4年。アコースティックサウンドをベースとしつつも、前作とは一味も二味も違う、ピアノやハープを主体としたトラックが印象的な、優雅かつ洗練された作品となった。
ピアノとギターが輝くような音像を映し出す「Driving At Home」、思わず目を閉じ没入してしまうようなインストゥルメンタル曲や、軽やかな初夏の匂いがしてくるような「To Go On」。そしてラストを締めくくる「Guest Room」では切なくも安らぎにも似た感情を、しなやかに流れるようなピアノタッチで弾きながら歌うなど、音を聴くだけで脳裏に情景が浮かぶようなソングライティングにさらに磨きがかかっている。独特かつ琴線に触れるメロディは、Natalie自身がこれまでに触れてきたインディー・エモ、マスロックなサウンドスタイルと、フォーク的なサウンドが溶け合うオリジナリティ溢れるものだ。
TRACKLIST:
01. Driving Home Late
02. Between the Ground and Sky
03. Movie
04. Pencil Drawn
05. Interlude (Back of My Mind)
06. Colours Fade
07. Sun Song
08. Under The Moon
09. When You Leave
10. To Go On
11. Five Positives
12. Guest Room
Natalie Evans (ナタリー・エヴァンス):
『イギリス、ケント州出身、ロンドン在住のシンガー・ソング・ライター。12歳の頃からギターを始める。Owen、Bright Eyes、Joanna Newsomから影響を受けたというフィンガーピッキングをベースとしたアコースティックサウンドを持ち味とし自主的に音楽活動を始める。のちにJulien BakerやThe Japanese HouseなどのSSWにも影響を受け、現在の音楽スタイルを確立した。
2010年に『Debut EP』と『Demo』をデジタルリリース。2013年には、セカンドEP『Houses』を現在の所属レーベルSmall Pondよりリリース。2017年にノルウェーのプロジェクトYou Could Be A Copのゲストヴォーカルとして参加。2018年自身初のフルアルバム『Better At Night』をリリース。イギリスで開催されているマスロックやポストロックの大型フェスArctangentにも出演。Katie Malco、Bonniesongs、Gulferとのツアーや、Angelo De Augustine、AA Williams、Tricot、Tera Melosといった有名アーティストと共演するなど、イギリスで幅広く活動している。
For Fans Of…
Joanna Newsom, Bright Eyes, Gregory And The Hawk, Phoebe Bridgers, Julien Baker